「やったーー」
思わず大きくばんざーーいという格好をした私の前で両親と弟が嬉しそうに頷いた。目の前にはシンプルで白い紙の真ん中に『合格』を告げる言葉がかかれている。そして、それとは別に封筒の中にA4サイズのマット紙に印刷された「合格証」が入っている。
大学を卒業後、就職をするも、仕事先でいつも失敗をし、それでも懸命にやってきた私はとうとう倒れて退職した。
やる気も何もかもすべてを失った私は母に言われ、職業訓練校で医療事務の資格を取る勉強を始めた。
初めは何となく、ただ通うだけだった私は、そこで自分とは年代の違う人たちと出会い、関わり、そして初めて自分の意志で「医療事務」の資格を取ることに決めた。
目標を決めるとようやく目の前が開けたような気がした。それからが大変だった。退職してから1年も経っていた私はたとえ意識がはっきりしても動くのに多くの気力を要した。懸命に勉強を開始しても、そもそも大学を卒業して5年以上が経っていた私にとって新しいことを覚える事は普通の三倍の労力が必要になった。学生時代と同じ勉強量・勉強方法では対して身につかなかった。試行錯誤をしながら勉強をしてようやく手にした、私の勲章だ。
「よかったね」
「おめでとう」
「なんか、嘘っぽくない?」
棒読みのようなお祝いの言葉に私の顔がこわばる。絶対、嘘っぽい。
「気のせい気のせい」
絶対嘘じゃない気がする。
「あんた、むかつく」
きーーっと顔をしかめた私に、家族の笑い声が響く。
さぁ、これからは就職するために努力をするぞ!